スタッフインタビュー

Vol.4 八角 剛史 アソシエイト(当時)

多様なスタッフが所属する福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局メンバーを紹介する企画、今回は元プロサッカー選手という特異な経歴を持つ八角アソシエイトのインタビューです。(※2019年まで在籍)

―八角さんは2018年4月、FDCにアソシエイトとして参画されました。元プロサッカー選手というのはFDCでは異色の経歴です。ご出身はどちらで、いつからサッカーを始められたのですか。

千葉県市川市の出身で、小学3年生までは野球をしていました。4年生から全員部活に入らなければいけない小学校で、野球部がなくて友達がみんなサッカー部に入ったので、僕も軽い気持ちで入ったのがサッカーとの出会いでした。高校のときはジェフ千葉のユースチームで、その後は駒澤大学のサッカー部で活動しました。

―学生時代、サッカーチームではどんな役割でしたか。

小学校から大学まで、全てキャプテンを務めさせてもらいました。「自分でやります」と手を挙げたわけではないのですが、自然に務めてきた感じです。もともと全体を見て、いろいろ考えるのが好きだったことは確かでした。

―プロのサッカー選手になりたいと意識したのはいつ頃でしょう。

小5のときのある出来事がきっかけでした。僕は体が大きく、運動能力もそこそこありましたのでチームでは中心となっていたのですが、ある日友達が市の選抜チームを受けようと誘ってくれて。全く興味がなかった僕だけ受かって、友達が落ちるというパターンで…。千葉県市川市はサッカーが盛んで強いチームが多く、その選抜チームでは日本一になりました。それから県の選抜などハイレベルなところに入り、自分を磨くことができた。その友達には頭が上がりません(笑)。

―プロになられて、仕事としてはいかがでしたか。

当然ですが、プロになったらまわりは非常にうまい人ばかり。僕には抜きんでた武器がないので、11人のチームの中の一人として、バランスよく機能することを大事にしていました。そのために、誰でもできることをいかに正確にやるか、準備しておいたことをどれだけ試合で果たせるかとか、人とはベクトルの違うやり方をしていたかもしれません。

今までの経験を語る八角さん

―八角さんにとって、サッカーをプレーする魅力とは。

瞬時の判断が連続することと、90分でいかに勝つべくして勝つか、というところです。自分がどうプレーするか、全体と自分のマネジメント力を問われます。あとは、試合の内外でチームに働きかけて、うまく結果が出るとうれしいですね。

―どのようにキャプテンとしてチームをマネジメントされていたのでしょうか。

選手会長をしているときも多かったのですが、例えば、ロッカールームでマンガや雑誌を読むのをやめようと言ってみたり、メンタル面を気にかけてそれぞれの選手と話したり、クラブに対してこういうクラブにしてはどうかと提案したりしていました。

―単なるサッカーの技術ではなく、人間性が重要ですね。

僕はそこが特に重要だと思っています。人間力を一番育ててもらったのは、大学時代の秋田浩一監督でした。当時、駒澤大学はとても強くて、大学選手権や総理大臣杯など、あらゆる大会で優勝しました。秋田先生は試合前、相手の戦術はこうだからとかではなくて、織田信長や本田宗一郎など、歴史上の人物やリーダーの話をされるような方でした。「お前は男として何ができるんだ」といつも問われて。言葉に重みがあって、先生の話を聞くとヤル気が出た。勝ち続けられたのはサッカー指導だけではなくて、人間的な教育があったからだと感謝しています。

―八角さんはご自身のメンタルをどうやって保っていましたか。

僕は生まれつき膝の病気があり、膝と足首を計5回手術しています。外科の学会に発表されるほどボロボロで。個人的には毎日足の痛みとどう向き合うかが課題であり、前へ進むモチベーションでした。実は今も歩くだけで痛くて、それでもプロとして10年プレーできたことを誇りに思っています。

―そんな状況でも、なぜサッカーを続けられたのでしょう。

好きだから。自分を成長させてくれるものがサッカーの中にたくさんあるからでしょうね。

―サッカー選手になるという夢が叶い、その後のビジョンはありましたか。

クラブのマネジメントに興味があって、現役のときからクラブがどうやって運営されているのか、どんなステークホルダーがいるのかなど、他の会場に行ったときにも見ていました。
日本のサッカーはJリーグができて25年、地域に根差すことがJリーグの根本の理念にあります。例えば、アビスパ福岡が福岡の何を体現できているか、ギラヴァンツ北九州が北九州の何を体現できているかと考えたとき、地元の選手を活用したり、地域の人間性も含めてチームにアイデンティティや特色を持たせてもいいのではないでしょうか。また、スポーツはもっと社会に感動を与えられる。これからの時代に合わせてデータやICT活用してもいいし、チームの個性や魅力がもっと出てくることがサッカー界の底上げにつながると考えています。

―サッカー×地域に注目されているのですね。

僕が生まれ育った市川市は東京のベッドタウンで、前はお祭りなどが盛んでしたが、今はどんどんコミュニティがなくなっている。だから、福岡のお祭りの文化はすごくいいなと思うし、ここならもっと地域でやれることがあると思っています。

公園で軽く汗を流す八角さん

―FDCとはどうやって出会ったのでしょう。

石丸事務局長やFDCスタッフが、たまたま僕の引退セレモニーがある試合に来てくれていました。そのセレモニーで僕は「ギラヴァンツ北九州はこのままでいいのでしょうか!」と提言して、サポーターはみんな拍手してくれました。先ほどお話したような、地域におけるチームの在り方に思うところがあったので。その話を聞いていた石丸事務局長と名刺交換をして、後日「うちでやりませんか」とお話いただきました。

―八角さんの実績があれば、いろいろなオファーがあったのでは。

ありがたいことに関東でいくつかお誘いいただいていたのですが、FDCのことを知るにつれてユニークな組織だとわかり、一企業に入るよりも見地を広げられると思い、こちらに入りました。

―4月からアソシエイトという立場ですね。日々どんなことをされているのでしょう。

総務と事業チームに属していて、基本的には事務所にいます。総務の業務をしながらも部会、分科会、プロジェクトの手伝いをしながら色々学んでいます。何もかもが初めてなので新鮮です。

―FDCでやってみたいことは。

スポーツの持つ様々な側面が社会の課題や行政問題を解決できるのではないかと考えています。現在はそういった分野の方々とお会いして学ばせて頂いたり、自ら提案していけるように案を練っています。
福岡都市圏にはスポーツ施設が少なかったり、活用しきれていなかったりしています。若者が流出していくことも課題です。グラウンドや施設を誘致して、地元のスポーツ人材を育てるのはもちろん、場所を活用することで地域や高齢者などのコミュニティを作ったり、防災にも役立てられるかもしれない。スポーツ施設を中心としたまちづくりや、スポーツを絡めた産学官民の連携に取り組んでいきたいと思います。

―福岡にはどんな印象をお持ちですか。

コンパクトで暮らしやすく、ご飯がすごくおいしい。独特のゆったりした時間の流れを感じます。仲間意識や地元愛が強いのは、とてもいいことですね。

―将来のキャリアをどう描いていますか。

サッカー選手はサッカー界に残る人が多いです。僕にもその選択肢はありました。でも、僕は一度外に出て知見を広げ、経験を積んでスポーツ界に戻りたいと思っています。プロのサッカークラブは試合で勝つだけでなく、社会の課題を解決できる可能性を秘めている。そういうことを見据えたクラブ作りや業界作りというところまで関わっていければと思っています。

サッカークラブはどうしても勝ち負けに左右されます。負けると監督や選手が解雇されて、またゼロからとなるパターンが非常に多く見受けられます。プロだから当たり前なのですが、もっと地域に根差してアイデンティティを受け継ぎながら、持続して強く、魅力的であるクラブ経営をしていけるような仕組みづくりが必要だと感じています。

―FDCは学び実践する場と捉えられているのですね。

ここにいると、サッカー界や一企業では知りえない情報がたくさん入ってきます。今は部会や分科会に出ると、いろんな話を聞くことができて、自分の中で一つ一つ整理している段階です。もともと学びたがりなので、FDCに来て正解でした。本当に全てが勉強です。これからやろうとしている事が簡単でないことは重々わかっていますが、失敗を恐れずにチャレンジしていきたいです。

―八角さんが仕事をする上で大切にしていることは何ですか。

自分の作業に集中していても、常に誰が何をやっているかは見ています。この人がここで困っているとか、こことここがうまくいけばいいのになどと気づくのですが、まだ僕には説得力がないです。これまでサッカー界で個性的な選手たちや組織を見続けてきて、培ってきたものがあるので、その力もFDCでどのように発揮できるか考え模索しているところです。

―JFAこころのプロジェクト「夢先生」として、子どもたちにお話される機会もあるようですね。

僕は足が悪かったので、小5から栄養学を勉強して、どうすれば食事で解決できるか考え、自炊もしてきました。自分よりサッカーがうまい人はたくさんいたけど、僕は食事やセルフマネジメントを徹底したことでプロとして長く活動できた。子どもたちにそんな観点も伝えています。

―休みの日は何をされていますか。

2018年8月18日に開催される「横浜FC 20th Anniversary Match」に、横浜FCレジェンドメンバーとして出場する予定です。だから今は福岡にどんな施設があるのか知るためにも、休日はフットサル場などに潜入して練習しています。久しぶりに数千人の前で試合をするので、とても楽しみです。(2018年7月インタビュー当時)

8月18日に行われた試合の様子

2018827日取材
所属・肩書きは当時のものです

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アソシエイト(当時)
八角 剛史
千葉県市川市出身。2008年からプロサッカー選手としてJリーグにて活動。2017シーズンで10年間の現役生活を終え引退。2018年4月より公益財団法人福岡アジア都市研究所に入所、福岡地域戦略推進協議会(FDC)に参画。JFAこころのプロジェクト「夢先生」としても活動。